八十代以上になると、一〇〇%の確率で白内障になる⁉
白内障について、三十代以降に発症や進行することはないと、以前は考えられてきたそうです。
ところが、パソコンや携帯電話、ゲーム機などによる目の酷使が原因で、近視になったり度が進んだりする大人が増えてきました。
そこで、どのような状況になると三十代でも白内障だと気がつくことができるのか、ということをご紹介します。
パソコンや携帯電話、ゲーム機などによる目の酷使が原因で、近視になる大人が増加
白内障は無色透明の水晶体ににごりが生じて起こり、八十代ではほぼ全員に発症
目の老化による病気の一つに白内障があります。眼をカメラにたとえると、レンズに相当する水晶体が白くまたは黄色くにごり、硬くなってしまう病気が「白内障」です。白内障にかかる割合は五十代以降高くなり、年齢が高くなるほど多く、八十代以上では一〇〇%であることが、厚生労働省などの調査で明らかになっています。
水晶体は、直径約九ミリ、厚さ約四ミリの凸レンズの形をしています。成分はたんぱく質と水分。中央の「核」と外側の「皮質」という線維から構成されていて、「水晶体嚢」という膜に包まれています。水晶体は無色透明ですが、年を取るうちに成分が酸化したり、核や皮質といった線維に老廃物がたまったりして、にごりが生じます。白内障は、水晶体のにごり方の違いによって次の三種類に分けられます。
患者さんが最も多いのは、水晶体の外側の皮質からにごりはじめる「皮質白内障」。次いで、中央の核からにごりはじめる「核白内障」、後ろ側の水晶体嚢からにごりはじめる「後嚢下白内障」。二つ以上のタイプがいっしょに起こる患者さんも少なくありません。
水晶体のにごりが進むと、「視界がかすむ」「まぶしく感じる」「ものが二重三重にダブって見える」といった症状が現れます。これらは水晶体のにごりによって光が散乱したり屈折したりして、網膜(カメラのフィルムの働きをする器官)に像がうまく結べなくなって起こる症状です。
こうした症状を自覚するようになって、ようやく眼科を受診する患者さんが大半を占めています。しかし、強度近視の人は三十~四十代でも「核白内障」になりやすいため、発症のサインを見逃さないことが大切です。
核白内障では屈折率の変化で老眼が一時的に改善したと錯覚することがある
強度近視とはどういう状態を示すのかお話ししましょう。
角膜(眼球の前面の透明な膜)の頂点から網膜の中心までの直線距離(眼軸長という)が延びた結果、目で見た情報が網膜の手前で像を結ぶ状態となり、遠くのものがぼやけて見える状態が近視です。網膜上でピタッと像を結ぶ正常視力の人に比べて、眼軸長が三・五ミリ以上長ければ強度近視と診断されます。
みなさんにもおなじみの視力でいえば、〇・一以下、屈折率(眼鏡などの矯正レンズの強さ)を現すジオプターでいえば、マイナス六・五以上が強度近視にあたります。そして成人後も進行するのが、強度近視の特徴です。
近視は、三十代以降に発症や進行することはないと、以前は考えられてきました。ところが、パソコンや携帯電話、ゲーム機などによる目の酷使が原因で、近視になったり度が進んだりする大人が増えてきました。
近視の人は網膜が引っぱられたような状態のため、網膜が傷みやすくなっています。目の血流も悪くなりがちで、水晶体に栄養が行きにくくなります。このことも、強度近視が「核白内障」になりやすい理由と考えらています。
もともと近視のある三十~四十代の人で、眼鏡やコンタクトレンズが見えにくくなり、度が進んだように感じたなら「核白内障」に要注意です。水晶体の核は、皮質よりも水分が少なく硬いため、代謝(体内で行われる化学反応)に伴って生じる老廃物が多く集まります。老廃物がたまって核が厚みと硬さを増し、「核白内障」になると光が通過しにくくなります。その結果、網膜の手前で像を結ぶ状態、つまり屈折率が高い近視の状態になるからです。
すでに老眼が出ている人の場合は、屈折率が変わったことで、老眼が治ったと錯覚しがちです。「核白内障」では物が二重三重に見える単眼複視が起こりやすいので、自覚症状があれば、「核白内障」を疑って、眼科で検査を受けてください。
出典:健康365 2011年11月号
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