片方の目を手ででふさいで、左右で見え方が違っているかどうかチェックしてみよう
物がゆがんで見えたり、視野の中心が黒ずんで見えることはありませんか?
それは、眼の疲れではなく、加齢黄斑変性という目の病気の可能性があります。
この状況を放っておくと失明の可能性もありますので、ここでは加齢黄斑変性とは何かをご紹介します。
加齢黄斑変性は形や色を識別す津重要な目の器官が壊され失明に至る怖い病気
物がゆがんで見える、あるいは、いちばん見たいところがぼやけたり黒ずんだりしてみえなくなるーふだん視力に問題がない人からすれば、信じられないような状態に陥るのが、加齢黄斑変性です。
加齢黄斑変性は老化によって起こる目の病気の一つ。年を取ると目の網膜にある黄斑部が傷んで、視野に異常が現れます。網膜はカメラでいうとフィルムに相当する器官です。黄斑変性は、フィルムが感光してしまい映像が映らなくなったような状態といえるでしょう。
網膜は目の奥にあり、外界から入ってきた映像をとらえます。黄斑部は網膜の中心にあり、物の形や大きさを判別したり、色や明暗などを識別したりする重要な役割を持っています。黄斑部は、直径1.5ミリほどの大きさで、黄斑部の中心には、中心窩という小さなくぼみがあり、物を見るのに大切な視細胞が集中しています。黄斑部に異常が起こるので、「黄斑変性」といわれるのです。
加齢黄斑変性になると、次のような症状が現れます。
♦視野の中心がゆがんで見える
♦左右の目で物の大きさが違って見える
♦視野の中心が黒くなる
♦視力が低下する
♦色の判別がつかなくなる
加齢黄斑変性は初期の段階では、視野の異常を感じる人はあまり多くありません。人間の目は、片方に異常が起こっても、もう一方の目が欠けている視野を補ってしまうからです。しかし、症状が進めば暗く見える部分が濃くなったり範囲が広がったりして、視野の中心が徐々に欠けていきます。治療をしなければ失明に至ることもあるので要注意です。
ときどきは片方の目を手ででふさいで、左右で見え方が違っているかどうかチェックするようにしましょう。
日本人には異常な血管が増殖する型の黄斑変性が多く出血すると視力が低下
加齢黄斑変性は、大別すると萎縮型と滲出型の二つのタイプに分けられます。
萎縮型は、視細胞に栄養を与えている網膜色素上皮という部分が徐々に萎縮していき、網膜がいずついて視力が徐々に低下していきます。滲出型は、網膜の外側にある脈酪膜から新生血管という異常な血管が発生し、網膜との間に入り込んで出血することで起こります。日本人に多いのは滲出型です。
新生血管は正常な血管とは違い、急ごしらえの血管のため、もろくて破れやすいのが特徴です。血管がもれ出すと、網膜が腫れたり、網膜の下に液体が溜まったりします。網膜が正しく働かなくなり、視野がゆがんだり黒く見えない場所ができてくるんです。新生血管が出血を起こすと、さらに別の新生血管が作られます。この血管が黄斑部の中心窩まで伸びてくると、視力が急激に低下します。
松本眼科院長:松本拓也
1961年、大阪府生まれ。1988年、高知医科大学卒業。医学博士。奈良県立医科大学付属病院などでの勤務を経て、2001年、松本眼科を開院。日本眼科学会、日本緑内障学会、日本コンタクトレンズ学会、日本眼光学学会所属。日本眼科学会専門認定医。
出典:健康365 (2011年11月号)
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