暗いと見づらい、眼鏡の度が進んだ、飛蚊症が気になる、など、
四十代を過ぎると、老眼の症状が現れてくるようです。
老眼の症状のポイントが、眼科医の井上賢治さんによって示されているのですが、次のような目の症状がありますか?
・遠近のピントがすぐに合わない
・薄暗いところで文字が見えずらい
・夕方になると目の疲れがひどい
・肩や首が強くこる
具体的な症状と目の構造について、井上先生によって説明されていますので、ここでご紹介します。
近くを見た後、すぐに遠くを見てかすめば老眼で少し暗いと見づらいなら赤信号!
年を取ると水晶体の弾力が失われ徐々に近くの物にピントを合わせる能力が低下!
私たちが身のまわりの情報を得るため、見たり聞いたりさわったりといったように、五感を駆使します。しかし、そのほとんどは、目から入ってくる視覚による情報です。
現代人は、パソコンやゲーム機、携帯電話の普及によって、近くばかりを見る生活が定着しています。最近では立体的に見える3D映画も多く、いままで以上に目に対する負担が増しているといっていいでしょう。
まず、人間が物を見るときのしくみについてお話ししましょう。
物を見るということは、光が反射した情報を感知するということです。
光が目に入ると、次の経路を通ります。角膜・前房・水晶体・硝子体を屈折しながら通過し、見ているものは網膜に像を結びます。網膜に移った像の情報は視神経を通って脳に伝達され、いま見ているものが何であるかを正しく認識するのです。
像を正確にとらえるため、目にはピントや光の量を調節する機能が備わっています。近くの物を見る場合は水晶体(カメラのレンズに相当する)を厚くすることで屈折力を増し、遠くを見るときは水晶体を本来の厚さに戻してピントが正しく合うように調節しています。
網膜より手前で像が結ばれてしまい、近くの物にしかピントが合わない状態が近視です。これに対し、矯正しない状態で網膜より奥で像が結ばれないため、遠くを見るにも水晶体を厚くしないといけない状態が遠視です。遠視の人は、遠くを見ると気には水晶体を少し厚く、近くを見るときには水晶体をかなり厚くしなければなりません。眼鏡がコンタクトレンズは光の屈折を人工的に変化させて、網膜に正しい像が映るようにしているのです。
しかし、年を取るとピントを自在に調節することができなくなり、しだいに近くの物が見えにくくなってきます。これが老眼です。近くの物にピントが合わなくなる原因は、水晶体が弾力性を失って硬くなるからです。前述したように近くを見るとき、私たちは水晶体を厚くするのですが、年を取って硬くなった水晶体は厚みをかえにくくなってしまうのです。水晶体の厚みは、毛様体筋も体のほかの筋肉と同様、年とともに衰えていきます。
水晶体が硬くなると、調節のために筋肉が衰えることにより、老眼になると近くにピントを合わせづらくなるだけでなく、瞬時にピントを合わせることもできなくなってくるのです。
長時間の読書がつらくなったり、肩こりや頭痛も起こったりしたら、老眼のサイン
私たちが老眼を自覚しはじめるのは、四十代の半ばごろからです。近くの物が見えづらくなる、遠近のピント調節が瞬時にできず、近くを見ていて急に遠くを見たときにかすんで見える、といった症状があれば、老眼を疑ってください。薄暗い場所で文字が見えにくくなった場合は、老眼の赤信号と考えていいでしょう。
ほかにも、次のような自覚があれば老眼が疑われます。
♦知らないうちに新聞などを目から遠ざけて読むようになった
♦長い時間の読書で目が疲れることが増えた
♦昼間は問題なくても、夕方になると目の疲れが激しくなった
♦目の疲れとともに頭痛の回数が増えた
♦いままでかけていた眼鏡の度が合わなくなってきた
♦肩や首のこりが強くなった
老眼になるとピントが合わせづらくなるため、目が非常に疲れるようになる人が少なくありません。頭痛や肩こりは、目の疲れに伴うものです。老眼は進行するので、老眼鏡は度の合ったものに替えるようにしましょう。視力の低下や頭痛・吐きけなどは、緑内障をはじめとする、ほかの目の病気でも起こります。四十歳を過ぎたら目の検査を定期的に受けることをおすすめします。
著書:井上眼科病院理事長・井上賢治
1993年、千葉大学医学部卒業。98年、東京大学医学部大学院修了。東京大学医学部付属病院分院眼科医局長などを経て、2003年、医療法人社団済安堂井上眼科病院付属お茶の水・眼科クリニック所長に就任。06年、医療法人社団済安堂お茶の水・井上眼科クリニック開院と同時に院長に就任。08年から現職。
公式サイト:https://www.inouye-eye.or.jp/clinic/
出典:健康365