食生活とガンに密接な関係があり、野菜や果物が一部のガンのリスクを確実に下げる!
ガンはいきなりできるわけではありません。
健康な人でも、がん細胞へと成長するガンの芽が毎日数多く発生しています。このガンの芽を抑え込むのはあなた自身の免疫力。そして、免疫力は毎日の食事で高めることができます。
『ガンが消える食べ物事典』の著者である、西台クリニック院長、千葉大学医学部臨床教授の済陽高穂さんによる、ガンになりにくい体質になるための食材を紹介しているコラムがありますので、ここでご紹介します。
毎日の食事を見直して、ガンになりにくい体質になる
私たちにはガン細胞が成長しないよう体を守ろうとする力、「免疫力」が備わっていて、ガン細胞が成長しないよう働いています。
食生活とガンに密接な関係があることは、様々な研究で明らかになっています。個別の食材や栄養素についてのエビデンス(科学的根拠)こそありませんが、アメリカの国立がん研究所(NCI)や日本の国立がん研究所センターは、様々な研究結果から、野菜や果物が一部のガンのリスクを確実に下げると報告しています。
イギリスのオックスフォード大学名誉教授のリチャード・ドール博士の研究によれば、ガンの要因の35%が食事で、アルコールや食品添加物、医薬品などを合わせると50%近くになるそうです。ガンの要因の約半分を食品(口から入るもの)が占めているのですから、ガンを遠ざけるには食事の見直しが不可欠なのは必然であると言えるでしょう。
ガンの患者さんに三大療法(手術、抗ガン剤治療、放射線治療)と併用して食事療法をすすめるようになって、もう十五年近く経ちますが、別の病院で「手がつけられない」と診断された患者さんが回復する姿をたくさん目にします。食事療法の効果はある、そう信じています。
ガンを促すもの、抑制するもの
もともとは正常な細胞だったものが、食生活の乱れや紫外線、ストレス、喫煙、アルコール、加齢などが原因で遺伝子が傷つき、それがコピーされるときにエラーが生じるとガンの芽ができます。健康な人でも一日に三千~五千個できると言われています。
ただ、これらがすぐにガン細胞へと成長するわけではありません。免疫力が押さえ込んでくれます。ところが、このとき、ガンの成長を促すプロモーターがあると、ガンの芽は増殖を繰り返していきます。逆にガンの芽の成長を抑制するものもあり、それらはアンチ・プロモーターと呼ばれます。
プロモーター●過剰な活性酸素
●塩分の過剰摂取
●クエン酸回路の異常
●動物性食品の過剰摂取済陽式食事療法の八大原則は、ガンの成長を促すもの(プロモーター)を避け、抑制するもの(アンチ・プロモーター)を積極的に取り入れて、ガンになりにくい体質を手に入れます。半年~一年以上続ければ、ガンになりにくい体質へと変わっていくでしょう。
【ガン予防のための、済陽式食事療法の八大原則】①減塩を心がける。一日5g以内が目標
②動物性たんぱく質・脂質を控える(一日に一個の卵と一回の鶏肉・魚介類。牛、豚、羊など四足歩行動物は週に一回)
③野菜と果物を大量にとる(一日200~500㎖のジュースと、野菜350~500g)
④胚芽を含む穀物、豆類、いも類をとる(週に1~2回の玄米。豆類、いも類は一日二回)
⑤乳酸菌、海藻類、きのこ類をとる(ヨーグルトは一日300g。海藻類・キノコ類は一日一回)
⑥レモン、はちみつをとる(レモンは一日一個、はちみつは一日大さじ二杯)
⑦油はオリーブオイル油かごま油
⑧自然水の摂取(もしくは浄水器を設置する)1.抗酸化物資を含むものを!
大阪大学名誉教授、中村仁信氏によると発ガンとそれを抑制する生体防御機能は次のようになっているそうです。
①体内に活性酸素が発生する➡抗酸化機能で除去(抗酸化物質を含む野菜や果物)
②活性酸素が増えてDNAが損傷➡DNAの修復機能(青汁など緑色の野菜に含まれるクロロフィル/葉緑素)
③細胞が突然変異する➡細胞の自滅を促す(海藻類に含まれるフコイダン)
④がん細胞が発生➡免疫細胞が処理(乳酸菌やβグルカン)生体防御機能が追いつかなくなるとガン細胞がどんどん増殖してきます。まずは免疫力の要となる抗酸化物質を含むものを、積極的にとりましょう。
代表的な食材
名称 栄養素 特徴 キャベツ
- イソチオシアネート
- ペルオキシダーゼ
- ビタミンC
アメリカの国立がん研究所が発表した、ガン予防に役立つ食品をまとめた「デザイナーフーズ・ピラミッド」で最も効果が高いグループに入る。 にんじん
- βカロテン
- αカロテン
- ビタミンC
にんじんジュースを毎日飲んでいる人は、飲んでいない人に比べてガンの発生率が低いという報告がある。ガン予防の強い味方と呼ばれている。 トマト
- リコピン
- βカロテン
- ルテイン
複数の抗酸化物資が含まれている。特にリコピンの抗酸化力はβカロテンの二倍、ビタミンEの百倍と言われる。生よりもジュースの方が吸収しやすい。 ブロッコリー
- スルフォラファン
- βカロテン
- ビタミンC
抗酸化ビタミンのほか、強力な抗酸化作用とガン予防効果のあるスルフォラファンを多く含む。スルフォラファンはつぼみやスプラウト(芽)に多い。 レモン
- ビタミンC
- クエン酸
- ヘスペリジン
抗酸化作用が強いビタミンC、クエン酸、ポリフェノールを多く含み、活性酸素の害を消去する。ヘスペリジンは血圧の安定、アレルギー予防にも役立つ。 抗酸化作用とは?抗酸化物質は免疫力アップと老化防止になる食物と成分日常生活の中で「抗酸化作用」という言葉を聞くことがあると思いますが、「そもそも抗酸化作用とは?」という疑問をお持ちの方もいますね。抗酸化作用は、活性酸素を取り除き酸化を抑える働きにより免疫力の上昇、老化防止、また動脈硬化やがんの予防に役立ちます。 体が酸化する食べ物と、体にとって抗酸化作用のある食べ物20歳半ばを過ぎると、シミ・しわ・たるみなどの「肌の老化」が気になり始め、もちろん誰でも「老化は防ぎたい!」と悩まれています。そこで、老化を防ぐ抗酸化作用のある食べ物と老化を促進させる食べ物、また、普段の生活に簡単にできる解決策をご紹介します。2.クエン酸回路を活発にする
細胞内でエネルギーを作り出しているシステムが「クエン酸回路」です。
フランスのパリ大学のピエール・ルスティン博士によると、クエン酸回路がスムーズに働かなくなり、つくりだされるエネルギーが不足すると発ガンが促されたそうです。
さらに、クエン酸回路が正常に働き、エネルギーが十分につくられるとガンが治ったと言いますから、クエン酸回路を活発に働かせることがガン予防になると考えられます。
現代の日本では、エネルギー源である糖質が不足することはほとんどないのですが、糖質の代謝を助けるビタミンB群が不足しがちです。ビタミンB群は動物性食品に多く含まれるのですが、植物性食品からもしっかりとるようにしましょう。
代表的な食材
名称 栄養素 特徴 玄米
- ビタミンB1
- フィチン酸
- ビタミンE
精白米に比べ、クエン酸回路を活性化するビタミンB1が多く含まれている。フィチン酸は抗酸化作用が強くガンの抑制に役立つという報告がある。 にんにく
- 硫化アリル
- カリウム
- セレン
硫化アリルは体内でビタミンB1が効率よく使えるように働く。「デザイナーフーズ・ピラミッド」では、もっともガン予防効果が高いグループに入る。 玉ねぎ
- 硫化アリル
- ケルセチン
- 不飽和脂肪酸
ニンニクと同様、硫化アリルが豊富。皮に含まれるケルセチンには強力な抗酸化作用があり、ガンを促進する物質を抑制することがわかっている。 ねぎ
- 硫化アリル
- βカロテン(緑の葉の部分)
- ビタミンC
ニンニクと同様、硫化アリルが豊富。硫化アリルの一つアリシンはガン細胞を攻撃するNK細胞の活性化に役立つ。解熱鎮痛効果や抗酸化作用も強力。 豚肉
- ビタミンB1
- ナイアシン
- たんぱく質
ビタミンB群が豊富に含まれる。ビタミンB1は硫化アリルと結合すると、体内で長期間利用できるようになる。食べすぎないように。週に一回程度。
3.ミネラルバランスを整える
私たちの体内はナトリウムとカリウムの濃度が一定に保たれるようになっています。塩分を過剰に摂取すると、細胞内のナトリウム濃度が高くなり、ガンのリスクが高まることがわかっています。
ガン患者さんの細胞内のミネラルバランスを調べると、細胞内のナトリウム濃度が高いことがわかっています。細胞内にはナトリウムを細胞外に出し、カリウムを細胞内に取り入れる酵素があるのですが、ガン細胞ではこの酵素の働きが低下しているそうです。
塩分を控えてナトリウム濃度が高くなりすぎないようにするのも大事ですが、同時にナトリウムの排泄を促すカリウムを積極的にとると先ほどの酵素が活性化するそうです。
代表的な食材
名称 栄養素 特徴 じゃがいも
- カリウム
- ビタミンC
- ビタミンB群
カリウムが豊富。ほかに抗酸化作用が強いビタミンCも多く含む。ビタミンCは過熱に弱く失われやすいが、じゃがいもは過熱しても損失がない。 きゅうり
- カリウム
- βカロテン
- ククルビタシン
カリウムが豊富。βカロテンやビタミンCの抗酸化作用も期待できる。皮に含まれる苦み成分ククルビタシンは、抗がん作用が強いものがある。 バナナ
- カリウム
- 食物繊維
- βカロテン
カリウムが豊富。マクロファージや白血球など免疫細胞が活性化する。どの成分が効くかはわかっていないが、免疫力アップに役立つと言われている。 アボカド
- カリウム
- ビタミンB群
- ビタミンE
カリウムが豊富。森のバターと呼ばれるほど質のよい脂質を含む。抗酸化作用が非常に強いビタミンEや腸内環境の改善に役立つ食物繊維も豊富。 わかめ
- カリウム
- フコイダン
- βカロテン
カリウムと抗酸化作用の強いβカロテンが豊富。フコイダンは免疫細胞(NK細胞)を活性化して、ガン細胞の自滅(アポトーシス)を促す作用がある。
カリウムとは?カリウムの多い食品は血圧低下、脳卒中予防になる!カリウムは食事から摂取する栄養成分で、脳卒中などの予防になると聞いたことがあるかもしれません。普段の食生活で、どのくらいのカリウムを摂取していると思いますか?ここでは、カリウムの役割と効果、そしてどんな食品に多くのカリウムが含まれているかご紹介します。4.腸内の善玉菌を増やす
腸には食べ物を消化して必要な栄養素を吸収し、体内の老廃物を排泄する(解毒)という大事な役割があります。
東京大学名誉教授の光岡知足氏の研究で、乳酸菌をとると小腸のパイエル板が刺激され、リンパ球が増えることが明らかになり、乳酸菌をとる「バイオジェニックス健康法」が注目されています。
さらに、最近の研究で、免疫細胞(リンパ球)の役60%は腸に存在していることがわかり、免疫力に大きな影響を与えていることがわかりました。
腸内環境をよくするには、腸内の善玉菌を増やしましょう。食物繊維も腸内細菌のエサになります。腸の蠕動運動もよくなって排便が促され、解毒に役立ちます。
代表的な食材
名称 栄養素 特徴 きのこ
- 食物繊維
- βグルカン
- MDフラクション(舞茸)
食物繊維が豊富。きのこ類に含まれるβグルカンは免疫細胞を活性化してガン細胞の増殖を制御する。MDフラクションは抗ガン剤よりガン抑制効果が強い。 オクラ
- 食物繊維
- βカロテン
- ムチン
食物繊維が豊富。抗酸化作用の強いβカロテンも多く含まれている。ムチンは粘膜を保護する働きがあり、免疫力アップに役立つ。 納豆
- イソフラボン
- たんぱく質
- オリゴ糖
オリゴ糖は腸内細菌の原料になる。大豆にはガン予防効果があると言われ、胚軸の部分に強力なガン抑制作用があることがマウスの実験で確認されている。 りんご
- 食物繊維
- リンゴペクチン
- アントシアニン
マウスの実験でリンゴペクチン(食物繊維の一種)にガン抑制効果があるとが確認されている。皮には強力な抗酸化物質が豊富に含まれている。 ヨーグルト
- 乳酸菌
- オリゴ糖
- カリウム
腸内細菌のエサになる乳酸菌やオリゴ糖が豊富に含まれている。乳酸菌には有害物質の毒性を抑え、腸内の蠕動運動を高める作用もあり、便秘改善に役立つ。 便の悪臭改善方法は、腸内の悪玉菌を減らして、善玉菌を増やすこと!悪臭がある便は、腸内細菌のバランスが悪くなっている状態です。腸内環境の状況を知るには便を見ることが一番簡単な方法で、腸内の状況が改善されれば便に現れます。ここでは、腸内の悪玉菌が増える理由と、善玉菌を増やして免疫力を上げる方法をご紹介します。おすすめ!ジュースレシピ
済陽式食事療法では、しぼりたてのフレッシュジュースを飲むようにしています。ジュースにすることで、たくさんの野菜や果物の栄養素を効率よく吸収できるからです。
ジュースを作るときには、ミキサーではなくジューサーを用いましょう。石臼で引くように素材をつぶす低速回転のジューサーが、栄養素の損失が少なく、おすすめです。
DNAの修復を促す葉緑素がたっぷり『グリーンジュース』
【材料】(400~500㎖分)
- キャベツ 4枚
- リンゴ 1と1/2個
- レモン 1個
【作り方】
- リンゴは種としんを取り除く。レモンは皮をむいて、くし形に切る。キャベツは1枚ごと丸めておく。
- 1をジューサーにかける。
【ポイント】
キャベツの代わりに小松菜、チンゲンサイ、ブロッコリー、水菜などを使ってもよい。
にんじんはガン予防の元祖『にんじんジュース』
【材料】(400~500㎖)
- にんじん 2本
- オレンジ 2個
- レモン 1個(好みで)
【作り方】
- にんじんは皮をむいて、適当な大きさに切る。レモンとオレンジは皮をむいて、くし形に切る。
- 1をジューサーにかける。
【ポイント】
オレンジの代わりにグレープフルーツ、りんご、パイナップル、トマト、イチゴなどを使ってもよい。
忙しいときには市販品を活用して『青汁・トマトジュース』
【材料】
- 冷凍青汁(粉末青汁でも可)100㎖
- トマトジュース 200㎖
- レモン 1個
【作り方】
- 青汁は水につけて解凍する
- 1の青汁をグラスに入れ、トマトジュースを加える。
- レモンの果汁をしぼり、2に加え混ぜ合わせる。
【ポイント】
冷やして飲むとおいしい(粉末青汁は冷水で溶かすとよい)。レモンを入れるとすっきりした味わいになる。
監修:済陽高穂
西台クリニック院長、千葉大学医学部臨床教授
千葉大学医学部卒業後、東京女子医科大学消化器病センターに入局。米国テキサス大学外科教室に留学後、東京女子医科大学助教授、都立荏原病院外科部長、都立大塚病院副院長を経て、現在に至る。ガンの三大療法に済陽式食事療法を組み合わせ、多くのガン患者さんを治療・改善に導いている。著書・監修に『ガンが消える食べ物事典』(PHP研究所)など多数。
出典:PHP平成28年8月10日号