半身浴と股割りで50キロ減量!200ミリの血圧を下げ、脳梗塞の再発を防ぐ元横関、玉ノ井太祐さん
玉ノ井太祐さんは玉ノ井部屋親方の元大関の栃東ですが、職業柄、体重を増やさなくてはならなかったため、三〇歳の若さで脳梗塞を経験することになりました。
その後、食事の改善と運動療法で、さまざまさ体調不良を改善することが出来ました。
その時の状況を本人がコラムにしていますので、ご紹介します。
半身浴・早歩きも試した、玄米食にも挑戦した!四年で約50キロの減量
高血圧は体質だったが太ることを優先させて脳梗塞を起こした
高血圧で脳梗塞を起こした痕跡があると診断を受けたのは、いまから四年半前の二〇〇七年三月、三十歳のときでした。
当時、私は大関になって六年目。三回の優勝を経験し、横綱候補といわれていました。二度、大関から陥落しましたが、二回とも一場所で復帰しています。
陥落の理由は、若いころから悩まされてきた右肩のケガで、大関になってからもケガのため、たびたび休場しなければならなかったからです。
もともと私は心臓肥大の持病があり、母親に似て高血圧ぎみ。そのせいか、ときどき片頭痛にも悩まされていましたが、三十歳の若さで脳梗塞を起こすとは、夢にも思っていませんでした。
二〇〇七年三月の春場所、強烈な片頭痛が左側頭部に数日間続いて起こり、一二日めで休場し大阪市内の病院に入院しました。最大血圧が二〇〇ミリ以上(基準値は一〇一~一三九ミリ)、最小血圧が一二〇ミリ以上(基準値は六一~八九ミリ)もあったのです。
MRI(磁気共鳴断層撮影)の検査の結果、脳梗塞の痕跡が見つかりました。言語障害につながる場所からわずか三ミリしか離れていないとのこと。私の相撲のスタイルは、頭からガツンとぶつかっていくものなので、脳の病気はこの上なく危険です。
相撲をやめる気はまったくなかったのですが、東京の病院で検査を受けたところ、医師から「これ以上相撲を取りつづけるのは無理。続ければ、脳梗塞が再発します」との宣告。数人の医師にセカンドオピニオン(主治医以外の医師の意見)を聞いて回りましたが、いずれも同様の意見でした。横綱をめざせるという自信はありましたが、最後は「しかたがない」「悔いはない」という心境で引退しました。
太るための食事から現役引退後は徹底した食事療法で五〇キロ減
私が大関になったころは、曙関や武蔵丸関、小錦関と言った巨漢力士が上位をしめていました。これらの力士に立ち向かうには、体重を増やさなければいけません。食事の量を増やすのはもちろん、体重が増えるというサプリメントを飲むこともありました。その結果、新入幕時は一四〇キロ(身長一八〇センチ)だった体重が引退時には一六〇キロ以上に増えていました。
体重を無理やり増やした努力があだとなり、高血糖にはならなかったものの、痛風を患い、高血圧になったようです。
現役引退後、医師からは体重を減らすこと、そのためには一日二〇〇〇キロカロリー程度まで、エネルギー摂取を減らすことなどを指導されました。力士は、食べることも仕事のうち。一日の食事で三〇〇〇~五〇〇〇キロカロリーを取っていましたから、二〇〇〇キロカロリーまで減らすことは稽古より苦しいことでした。
そこで、食事制限と運動療法に取り組みました。
毎日一時間半の半身浴と股割りを習慣化したら痛風が消え血圧も正常
♦一日二〇〇〇キロカロリー摂取を守る
ご飯やめん類などの炭水化物の摂取量を大幅に減らし、野菜を多くとる。
♦一日三食を規則正しく食べる
相撲取りの食事は昼と夜の一日二回(十一時半と十八時)。十代から身についた、この食習慣を変えるのは簡単ではありません。手はじめに、朝食(七時)にはヨーグルトや野菜ジュース、果物など、食べやすいものをとるようにしました。また、二十一時以降はいっさい食べ物を口にしないようにしたのです。
♦一時間半の半身浴で汗をかく
現役時代は、朝の稽古と夕方の筋力トレーニングでたっぷり汗をかいていました。しかし、引退してからは汗をかく機会が少なくなりました。そこで始めたのが、半身浴です。
わたしの半身浴は、まず一度お湯を全身にかぶり、次にひざまでつかる程度までお湯に入ります。一時間は入っています。
♦ストレッチを十分に行う
血流をよくする「股割り」と呼ばれる相撲独自のストレッチ(柔軟体操)は欠かせません。
減量すると筋肉が衰え、それとともに節々が痛くなりましたが、朝稽古(七時半~十時半)の指導の合間に股割りを行う習慣がついてからは、体重が減っても痛みを感じることはなくなりました。
その結果、最初の一年間で二〇キロも減量でき、四年間で約五〇キロの減量に成功しました。
入院中に血流を促進する薬を投与されましたが、血圧は下がりませんでした。ところが、減量すると血圧も低下。いまでは、最大血圧も最小血圧も基準値域内に収まっています。尿酸値も六ミリグラム(基準値は男性四~七ミリグラム、女性三~五.五ミリグラム)になり、痛風とは無縁になりました。
玉ノ井部屋では、今年の名古屋場所、秋場所で二人の力士が幕内に昇格。本人たちの努力の結果ですが、健康だからこそ達成できたのです。私自身の経験を生かしながら、ケガや病気にならないように指導しています。そして、弟子どうしが切磋琢磨しながら、自分の目標を達成してほしいと願っています。
出典:健康365 2011年11月号
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