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『笑いの天使』を見つけよう。もっと笑い、苦しいときこそ笑いましょう。

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『笑いが人生を豊かにする』意識的に笑うことが大切。

もっと笑いましょう。苦しいときこそ笑いましょう。

笑いの第一人者の方は、辛いときこそ人には笑いが必要であり、また意識的に笑うことが大切だといいます。

いままで数多くの芸人さんを取材してきたという、毎日新聞社客員編集委員の近藤勝重こんどうかつしげさんによる、『笑い』についてのコラムをご紹介します。

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面白いことを積極的に見つけ、「多く笑う」だけ

新聞記者として日々事件を追っていた私が、なぜ「笑い」に魅せられたのか。それは一九八〇年代の大阪でメキメキ存在感を増していた、「吉本興業」など上方の笑い全般に興味を持ったのがきっかけです。

人気絶頂の「やすし・きよし」、新進気鋭きえいの「紳助・竜介」、明石家さんまといった芸人さんらを取材、そこからずっと、笑いと関わってきました。

今は、毎日新聞(大阪)で「近藤流健康川柳」の選者役のほか、「全日本川柳協会」の顧問を務めています。ごく普通の市民の方々が、日常の中の笑いを五七五のリズムに乗せて、作品を発表し合っています。

さて今回お話ししたいのは、この「笑い」の効用です。皆さんひとりひとりに、「もっと笑おう!」と呼びかけたいのです。

その方法は川柳である必要はありません。もちろん、話芸や技術も要りません。面白いことを積極的に見つけ、「多く笑う」だけでいいのです。

それこそが今の世の中で、最も強く求められていることではないか、と私は思います。

苦しいときこそ笑おう

格差と貧困、児童虐待、介護問題、うち続く災害、そしてさらなる大災害の不安。私たちはまさに、苦しみの中にいます。そんなときこそ、ひとりひとりが「意識的に笑う」ことが大事ではないでしょうか。

「苦しいときに笑おうなんて無理だ」と考える方もいるでしょう。しかし実は、悲しみの中でこそ、人は笑いを求めるものです。

五年前の東日本大震災の折り、家が流出して避難所生活を送ったあるご婦人が、こんな川柳を詠みました。

「哀しみを 知って笑いを 深くする」

避難所で、同じく家を失った仲間とともに食事を作る中で生まれた句だそうです。

作業中には、しばしば誰かが冗談を飛ばし、そのつど笑いが起きたとか。笑うことで皆が支え合っていた、と彼女は後に語っています。

ここには、希望を取り戻そうとする人々の結束があります。同じ哀しみを抱く人々が寄り添う「場」があります。

この「場」は被災者に限らず、すべての人が潜在的に欲しているものだと思います。不安と孤独を抱えながら生きる人が、「笑いの共同体」に身を置けたら、どれだけ救われるかわかりません。

ここでの笑いに求められるのは、話術ではなく、まして毒舌や皮肉でもなく、「やさしさ」です。

相手を笑顔にしよう、という思いやりに基づく、たわいもない冗談。これなら芸人並みの技術などなくとも、皆にできるでしょう。

ただし、「やさしさ」には強さも必要です。人を元気にしたいなら、自分の中にもパワーがなくてはなりません。そこで、「自分で自分を笑わせる」ことも、重要になってきます。

お風呂で「ワハハハ」と笑顔で言う

それには、どうすればいいでしょうか。答えは至って簡単。「笑顔をつくり、笑い声を立てる」だけでいいのです。

人間はあらゆる動物の中で唯一、「おかしくなくとも笑える」という能力を持っています。従って作り笑いや愛想笑いもできてしまうわけですが、これは良い方向にも活用できます。

笑顔をつくると、表情筋の変化を感知した脳は「面白いと感じている」と認識します。笑い声を立てると、同じく「楽しいのだ」と思い込み、幸せな気分になれるのです。

このメカニズムを利用した、簡単なトレーニングをひとつ、紹介しましょう。

お風呂で毎晩、笑顔をつくって「ワハハハ」と五回、言ってみてください。言い終わったとき、確実に気持ちが明るくなっていることを感じるはずです。

脳を「だまして」楽しくなるこの方法、だまされたと思って、ぜひお試しあれ。

「意識的に笑う」ことに慣れたら、「意識的に人と接する」ことにもトライしましょう。

インターネットが発達するなか、現代人はつい生のコミュニケーションを怠りがちです。しかし相手の顔を見ずに行るやりとりは、どこか情緒に欠けるもの。笑いも、やさしさを伴わないものになりがちです。

「笑いの天使」を探してみる!

ちなみに私が大学で接する今時の若者は、ツイッターやSNSを使いこなせるのに、対面となると緊張して話せない子が多数います。

そう考えると、中高年は若者ほど深くネットと関わらないぶん、生のコミュニケーションは得意かもしれませんね。

さて、そのコミュニケーションに笑いと増やすには、ネタが必要です。相手を笑顔にできるような話題を、数多く仕入れておきたいところです。

「ネタなんて見つけられない」などという心配はご無用。日常のあらゆるところに、笑いのもとは転がっているものです。

たとえば先日、私がバスの中で聞いた女子高生たちの会話。

「『煮炊きもの』ってなに?」「ニタキモノ?知らない」「どこで売ってるんだろ」・・・笑いをこらえるのに苦労しました。

はたまた散歩中にすれ違った、シーズー犬を連れたご婦人。なんとその顔、シーズーそっくり。これまた笑いをかみ殺しました。

今は亡き劇作家・中島らもは、これを「笑いの天使」と表現していました。一日一回、呼んでもいないのに笑いの天使が降ってくる、とボヤキ混じりに語っていたものです。

私たちの周辺にも、必ず笑いの天使がいて、そっと目の前に立っているはずです。

天使と目が合ったら、ぜひ笑ってください。そして、誰かにその話を伝えましょう。そうして人から人へと広がる笑いは、この世界をきっと、明るく照らすでしょう。

毎日新聞社客員編集委員・近藤勝重

愛媛県生まれ。早稲田大学卒業後の1969年、毎日新聞社入社。大阪本社社会部にて、グリコ・森永事件等に携わる。その後、吉本興業など上方芸能へと取材フィールドを広げ、「笑い」の研究を深め、現在では「笑い」の第一人者として知られる。現職のほか、全日本川柳協会顧問も務める。

出典:PHP平成28年8月10日号

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